プリキュア・イターナルサンライズ!

プリキュアは2023年に車椅子の巨乳科学者・虹ヶ丘ひろみ/キュアヘリオと三体合体巨大ロボ「イターナルV」が登場し、2024年は火星が舞台のロボット刑事ものになるのです。

ジョン・ヴァーリイ『ブルー・シャンペン』の読者だましに訳者がはまったのです

『ブルー・シャンペン』のヒロインのメガン・ギャロウェイは感覚を再現するテープのAV女優で、20歳くらいの外見だが実は30過ぎなのです。重い身障者で、とほうもなく高額な義肢「黄金のジプシー」のレンタル代のためにAVに出ているのです。主人公のQ.M.クーパーは脳筋のアホなのですが、インテリのメガンと恋仲になるのです。

元ネタ

マンハッタン・トランスファーManhattan Transferの同名の曲「Blue Champagne」が元ネタなのです。歌詞に

To toast the dream that was you

という句があるが、toastには「乾杯する、体を温める、評判の(美)人、意のままに操るhave someone on toast、終わったbe toast」という意味があるのです。この句は

to toast (the dream that was you)

と解釈すれば、「あなただった夢を(乾杯する|温める|意のままに操る|終わらせる)」というメガン側の気持ちを

to (toast the dream) that was you

とtoastを名詞に解釈すれば、「あなただった、夢の評判の美人へ」というクーパー側の気持ちになるのです。

冒頭

赤い部分が浅倉訳の不適切な部分なのです。真っ赤っかなのです。

Megan Galloway arrived in the Bubble with a camera crew of three. With her breather and her sidekick she was the least naked nude woman any of the lifeguards had ever seen.
“I bet she’s carrying more hardware than any of her crew,” Glen said.
“Yeah, but it hardly shows, you know?”
Q. M. Cooper was thinking back as he watched her accept the traditional bulb of champagne. “Isn’t that some kind of record? Three people in her crew?”
“The President of Brazil brought twenty-nine people in with her,” Anna-Louise observed. “The King of England had twenty-five.”
Yeah, but only one network pool camera.”
“So that’s the Golden Gypsy,” Leah said.
Anna-Louise snorted. “More like the Brass Transistor.”
They had all heard that one before, but laughed anyway. None of the lifeguards had much respect for Trans-sisters. Yet Cooper had to admit that in a profession which sought to standardize emotion, Galloway was the only one who was uniquely herself. The others were interchangeable as News Anchors.

 浅倉訳

メガン・ギャロウェイは、三人の撮影班をひきつれて<バブル>へやってきた。補助呼吸装置とボディーガイドをつけた彼女は、全裸とはいえ、ヌードからはほど遠かった。プールの救助員たちも、こんなものを見るのははじめてだった。
「彼女、撮影班よりもハードウェアをごっそりかかえているぜ」とグレンがいった。
「ああ。だけどそうは見えないところがミソだ、ちがうか?」
Q・M・クーパーは、彼女がここの伝統の球形カプセルに入ったシャンペンを受けとるのをながめながら、昔を思いかえした。「ちょっとした記録じゃないかな?お付きが三人もいるってのは」
「ブラジル大統領はどう?彼女、二十九人もお供がいたわよ」アンナ=ルイーゼが答えた。「イギリス国王は二十五人」
「うん。だけど、ネットワーク・プールのカメラはたった一台だった
「あれなの。黄金のジプシーって」リアがいった。
アンナ=ルイーゼが鼻を鳴らした。「どっちかっていうと、ブリキのトランジスターに近いんじゃない」
このジョークは何度もむしかえされたものだったが、それでもみんなが笑った。プールの救助員たちは、トランス・シスターズと呼ばれる体験テープのスターたちに、あまり敬意をはらっていないのだ。それでもクーパーは、感情を規格化するその業界で、ギャロウェイだけが独自の個性をたもっていることを、認めずにはいられなかった。ほかの連中は、ニュース解説者のように、互換性のあるやつばかりだ。

 冒頭のたったこれだけにひどい箇所がたくさんあるのです。

with a camera crew of three

三人の撮影班をひきつれて

これはAV撮影なのです。見世物のメガンはひきつれられる側なのです。

the least naked nude woman

全裸とはいえ、ヌードからはほど遠かった。

メガンはAVの撮影だから裸が丸見えなのに、義肢の「黄金のジプシー」がついているから全裸から遠いのです。 それが邪魔でガウンを着せてもらえないのです。難しい小説ですが、この二つだけはメガンがAV女優であることを理解していればわかるのです。

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艦娘をもっとエロくしたものをイメージすればいいのです。

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浅倉訳だと全裸の人がパワーローダーを着ているようなものなのです。

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ひどいのはこちらもかわらないのです。これではキスもできないのです。メガンは力場で肺を直接動かしているのです。

her breather and her sidekick

補助呼吸装置とボディーガイド

メガンは元ネタのようなジャズのブラスバンドに喩えられているので、そのままブリーザーにすべきなのです。またsidekickは

a person closely associated with another as a subordinate or partner 

という意味であり、メガンがクーパーではなく義肢を伴侶に選んだという意味があるのです。

hardware

ハードウェア

hardwareは「ハードコアな(=エロい)衣装hard-wear」とのダジャレなのです。ハード-ウェアでいいのです。

“Yeah, but it hardly shows, you know?”

「ああ。だけどそうは見えないところがミソだ、ちがうか?」

救助員たちはメガンをテープではよく知っているが、実物を見るのははじめてで、だから黄金のジプシーを見るのもはじめてで、「とてもそうは見えんよな」とびっくりしているのです。「そう見えないところがミソ」だはおかしいのです。

the traditional bulb of champagne

ここの伝統の球形カプセルに入ったシャンペン

これは伝統的なシャンパングラスのことなのです。シャンパングラスを見てVIPのことを思い出したのです。

 

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こんなやつのことなのです。「ブルー・シャンペン」の舞台となるプールもこんな形をしているから名前を取られたのです。メガンが普通にシャンペンを飲むところからも、ブリーザーが力場で肺を動かしていることがわかるのです。

“Yeah, but only one network pool camera.”

「うん。だけど、ネットワーク・プールのカメラはたった一台だった」

 VIPのお忍びだから、プールのネットワーク監視カメラ以外には、報道のカメラはなかったという意味なのです。

 “So that’s the Golden Gypsy,”

 「あれなの。黄金のジプシーって」

これがメガン、そしてこれが黄金のジプシー、と言ったのです。リアも知っているのです。バカにしているのです。

“More like the Brass Transistor.”

「どっちかっていうと、ブリキのトランジスターに近いんじゃない」

 ジャズの喩えがあるからブラス(黄銅)なのです。

 They had all heard that one before, 

このジョークは何度もむしかえされたものだったが

救助員たちははじめてメガンを目にしたので、超有名な定番ジョークをやっと口にできたのです。メガン、黄金のジプシー、ブラスのトランジスターと三段落ちになっているのです。

None of the lifeguards had much respect for Trans-sisters.

プールの救助員たちは、トランス・シスターズと呼ばれる体験テープのスターたちに、あまり敬意をはらっていないのだ

 あまり、ではなく「まったく」なのです。ジャズをラジオで聴く喩えなので、素直にトランシスターと訳せばいいのです。

 

Galloway was the only one who was uniquely herself.

ギャロウェイだけが独自の個性をたもっていることを

あとでわかるがMeganとGallowayとMegan Gallowayでは意味が違うのです。Meganはメガン自身、Gallowayはクーパーや世界が見る彼女、Megan Gallowayは客観的にメガンを指すのです。この文はクーパーがAV女優であるメガン・ギャロウェイを性的な目で見て言っているのです。

interchangeable

互換性のある

ニュースキャスターは替えがきくという意味なのです。クーパーは身障者のメガンに特別に興奮していたのです。ハードウェアや標準化ときて互換性と考えるとヴァーリイの罠にはまるのです。ちなみにメガンは身障者でAV女優で黒人の大三元です。

○ビ訳なのです。

メガン・ギャロウェイが三人のカメラクルーと<バブル>に到着した。ブリーザーとサイドキックのせいで、救助員たちはこんなに裸から遠いヌードは見たことがなかった。
「おい見ろよ。あの女、カメラクルーよりもたくさんハード-ウェアをかかえてるぞ」とグレンがいった。
「ああ。ぜんぜんそうは見えんよな」
Q・M・クーパーは、彼女が伝統的な形のシャンパングラスを受け取るのを見て思い出した。「あれ記録じゃないか?クルーが三人っての」
「ブラジルの女大統領は二十九人連れていたわ」アンナ=ルイーゼはよく見ていた。「イギリス国王は二十五人」
「ああ。でもカメラはプールのネットカメラ一台だけだ」
「で、あれが『黄金のジプシー』」リアがいった。
アンナ=ルイーゼがフンと鼻を鳴らした。「というよりブラス(黄銅)のトランジスターね」
みんなが聞いたことのあるジョークだったが、またみんな笑った。トランシスターに敬意を払う救助員などいなかった。それでもクーパーは、感情を標準化しようとする業界にあって、ギャロウェイは彼女だけのかたちで自分自身でいるただひとりの存在だと受け入れざるをえなかった。ほかの連中はニュースキャスターのように換えのきくものだった。

最後から二つ目の段落

こちらはさらに真っ赤っかなのです。

The tape she had left behind continued to haunt him. He had kept it, and viewed it when he felt strong enough. Again and again the girl in the wheezing sidekick walked across the room, her face set in determination. He remembered her feeling of triumph to be walking, even so awkwardly.
Gradually, he came to focus on the last few meters of the tape. The camera panned away from Megan and came to rest on the face of one of the nurses. There was an odd expression there, as subtle and elusive as the face of the Mona Lisa. He knew this was what Megan had wanted him to see, this was her last statement to him, her final plea for understanding. He willed himself to supply a trans-track for the nurse, to see with her eyes and feel with her skin. He could let no nuance escape him as he watched Megan’s triumphant walk, the thing the girl had worked so long and hard to achieve. And at last he was sure that what the woman was feeling was an uglier thing than mere pity. That was the image Megan had chosen to leave him with: the world looking at Megan Galloway. It was an image to which she would never return, no matter what the price.
In a year he allowed himself to view the visual part of the love tape. They had used an actor to stand in for him, re-playing the scene in the Bubble and in the steam-boat bed. He had to admit it: she had never lied to him. The man did not even resemble Cooper. No one would be studying his lovemaking.
It was some time later before he actually transed the tape again. It was both calming and sobering. He wondered what they could sell using this new commodity, and the thought frightened him as much as it had Anna-Louise. But he was probably the only spurned lover in history who knew, beyond a doubt, that she actually had loved him.
Surely that counted for something.

 浅倉訳

彼女があとに残していったテープは、クーパーの心にとりついて離れなかった。彼はそれを捨てずにおいて、そうする元気があるときにだけそれを見た。ぜいぜい音を立てるボディーガイドに包まれた少女は、堅い決意に顔をひきしめて、何度も何度も部屋のなかを横切った。たとえどれほどぎこちなくても自分で歩けるようになった彼女の勝利感は、いまも思いだすことができた。
じょじょに彼の注意は、そのテープの最後の数メートルに集中するようになった。カメラはメガンからパンして、ひとりの看護婦の顔を映しだす。その顔には奇妙な表情がやどっていた。モナリザの顔のように微妙でとらえにくい表情。クーパーは、それこそメガンが彼に見せたかったもの、それこそ彼女のお別れの言葉、理解を求める最後のせつない訴えなのをさとった。彼は自分をはげまして、その看護婦の体験テープがどんなものかを想像しよう、彼女の目で見、彼女の肌で感じようとした。メガンの誇らしげな歩行、あれほど長く苦しい努力のすえに少女がやっとかちとったもの--それをながめている看護婦の表情から、どんなわずかなニュアンスも見逃すまいとした。そして、とうとうその女がどんなことを感じているか、確信を持つことができた。それはたんなる哀れみよりも、もっと不愉快なものだった。それなのだ、メガンが彼に残していくことにしたイメージは--世界がメガン・ギャロウェイを見る目。それは彼女がどんな犠牲をはらっても、二度とそこへ帰りたくないイメージなのだ。
一年がたつころには、彼もあの愛のテープのビジュアルな部分だけを見てやろうという気になった。彼の代役には俳優が使われ、<バブル>のなかや、汽船をかたどったベッドでのシーンを再現していた。彼も認めないわけにはいかなかった--彼女けっして嘘をついたわけじゃない。その男はクーパーに似ても似つかなかった。だれも彼の愛技をのぞいているわけではなかった。
それからしばらくのち、彼はそのテープを実際に体験してみた。それは怒りを静めると同時に、酔いをさましもしてくれた。彼は業界がこの新商品を使ってどんなものを売るのだろうかと考え、アンナ=ルイーゼとおなじように背筋が寒くなった。だが、おそらく彼は歴史はじまって以来のユニークな失恋男だともいえた。女から真実愛されていたことを、疑問の余地なく知っているのだから。
それがいくらかの慰めになるのは、たしかだった。

真っ赤っかだけど、一つの大きな間違いがあらゆるところに反映されているのです。 

The tape she had left behind continued to haunt him.

リハビリのテープとラブテープがクーパーを何年もbondするのです(テープだから)。浅倉訳にはこのイメージがないのです。

when he felt strong enough

そうする元気があるとき

耐えられるときに決まっているのです。

Again and again the girl in the wheezing sidekick walked across the room, her face set in determination.

ぜいぜい音を立てるボディーガイドに包まれた少女は、堅い決意に顔をひきしめて、何度も何度も部屋のなかを横切った。

サイドキックがギーギーガチャガチャいっているのです。Again and againはwalked across the roomとset in determinationのどちらにもかかるのです。

He remembered her feeling of triumph to be walking

自分で歩けるようになった彼女の勝利感は、いまも思いだすことができた

 この文は

  • He remembered (her feeling of triumph to be walking).
    彼は、彼女の、歩いていることの勝利感、を思い出した。
  • He remembered her (feeling of triumph to be walking).
    彼は、彼女が歩いていることに勝利を感じていたこと、を思い出した。
  • He remembered (her feeling of triumph) to be walking.
    彼は、彼女の勝利感が、歩きはじめたこと、を覚えた。
  • He remembered her (feeling of triumph) to be walking.
    彼は、彼女が勝利を感じながら、歩きはじめたことを、覚えた。

と少なくとも四通りに解釈できるのです。浅倉訳は最初の解釈なのです。しかしいちばんビビッドなのは最後なのです。

even so awkwardly

たとえどれほどぎこちなくても

awkwardlyはauk-ward-lyというダジャレなのです。aukはウミガラスなのです。ペンギンに名前を取られた元祖ペンギンなのです。wardには「病室」「監房」「監督・保護」という意味があるのです。evenには「~であっても」以外に「実に」という意味があるのです。なのでここは浅倉訳以外に「メガンは本当に監房にいるみたいだったが」「クーパーは本当に保護監督的だったが」という意味があるのです。

the last few meters of the tape

そのテープの最後の数メートル

これはテープの長さと、そこに収録されているメガンの歩みの数メートルがかかっているのです。

subtle and elusive 

微妙でとらえにくい

たしかにelusiveには「つかみどころがない」という意味があるのですが、「たくみに逃げを打つ」というのが正しいのです。おぞましい感情をモナリザのような微笑みでごまかしているのです。

this was her last statement to him, her final plea for understanding

それこそ彼女のお別れの言葉、理解を求める最後のせつない訴え

ここは裁判になぞらえているのです。last statementとfinal pleaは最終陳述最後の抗弁なのです。メガンが被告でクーパーが判事なのです。メガンは自分のしたこと(クーパーとのラブテープを売ったこと)は正しいと主張しているのです。

He willed himself to supply a trans-track for the nurse, to see with her eyes and feel with her skin.

彼は自分をはげまして、その看護婦の体験テープがどんなものかを想像しよう、彼女の目で見、彼女の肌で感じようとした。

 看護婦にかわって自分の体験テープを裁判に提出するのです。

He could let no nuance escape him as he watched Megan’s triumphant walk, the thing the girl had worked so long and hard to achieve.

メガンの誇らしげな歩行、あれほど長く苦しい努力のすえに少女がやっとかちとったもの--それをながめている看護婦の表情から、どんなわずかなニュアンスも見逃すまいとした。

クーパーがニュアンスを逃すまいとしたのはメガンの歩みからなのです。let no nuance escape him as he watchedは「見ることによって逃さない」と「見ることによって逃す」と二つの意味があるのでAnd at last he was sure that what the woman was feeling was an uglier thing than mere pity.

す。

そして、とうとうその女がどんなことを感じているか、確信を持つことができた。それはたんなる哀れみよりも、もっと不愉快なものだった。

uglierは絶対比較級なのです。thanも「ではない」なのです。「たんなる同情ではないひどくおぞましいもの」なのです。クーパーも看護婦とおなじく、カタワが生意気にと思ったのです。womanとgirlが対比されているのです。女は残酷なのです。メガンも残酷だと思わせようというひっかけなのです。

That was the image Megan had chosen to leave him with: the world looking at Megan Galloway. It was an image to which she would never return, no matter what the price.

それなのだ、メガンが彼に残していくことにしたイメージは--世界がメガン・ギャロウェイを見る目。それは彼女がどんな犠牲をはらっても、二度とそこへ帰りたくないイメージなのだ。

この文は

  1. that was the image / It was an image
  2. Megan had chosen to leave him with / to which she would never return
  3. the world / no matter
  4. looking at / what
  5. Megan Galloway / the price

という対比になっているのです。2より、左右はおなじものなのです。メガンは世界を無価値だと思っているのです。前に書いたけど、Meganだけだと彼女自身を、Gallowayだけだと世界が見る彼女を、Megan Gallowayは客観的な彼女を指すのです。クーパーもおなじなのです。

Megan had chosen to leave him with: the world looking at Megan Galloway.

これは「彼に残した」だけでなく「彼のもとを一緒に去った」とも解釈できるのです。もうAVには出ませんという意味なのです。事実、大金持ちになって引退するのです。

In a year he allowed himself to view the visual part of the love tape.

一年がたつころには、彼もあの愛のテープのビジュアルな部分だけを見てやろうという気になった。

the love tapeはあのとき収録した市販されたテープのことなのです。「見てやろうという気になった」ってなんなのです。メガンを傷つけた自分をいくらか許せるようになったのです。リハビリテープを見て理解して罪悪感を抱いているのです。

the steam-boat bed

汽船をかたどったベッド

「汽船をかたどったベッド」ではなく、the Mississippi Suite, the best in the hotelなのです。ミシシッピー川の外輪客船のことなのです。

He had to admit it: she had never lied to him.

彼も認めないわけにはいかなかった--彼女けっして嘘をついたわけじゃない。

ここではテープの映像しか見ていないのです。ここは

she actually had loved him

との対比になっているのです。具体的になにを言ったのかは〇ビは知らないのです。

The man did not even resemble Cooper. No one would be studying his lovemaking.

その男はクーパーに似ても似つかなかった。だれも彼の愛技をのぞいているわけではなかった。

男優はクーパーの性技をまねなかったのです。彼の性技を知りたいユーザーはいないのです。あたりまえなのです。

It was some time later before he actually transed the tape again. It was both calming and sobering.

それからしばらくのち、彼はそのテープを実際に体験してみた。それは怒りを静めると同時に、酔いをさましもしてくれた。

「しばらく」よりはもっとなのです。

he actually transed the tapeは、あとのshe actually had loved himと対応しているのです。男のやることと女のやることの違いなのです。It was both calming and soberingのitが指すものは二つ考えられるのです。

  • the tape → 恋がcalmingでsobberingだと思っている人なのです。浅倉訳はこちらなのです。
  • some time → 恋がexcitingでdrunkenだと思っている人なのです。○ビはこちらなのです。

クーパーがトランスする気になったのは気分が落ち着いたからなのです。逆ではないのです。何年たっても落ち着かないのに急に見る気になったりはしないのです。トランスでわかったのは、このテープが恋の感覚を再現するということなのです。だれかを想う気持ちではなく、ドキドキしたり切なくなったりする感覚だけなのです。メガンの気持ちはぜんぜん関係がないのです。

He wondered what they could sell using this new commodity, and the thought frightened him as much as it had Anna-Louise.

彼は業界がこの新商品を使ってどんなものを売るのだろうかと考え、アンナ=ルイーゼとおなじように背筋が寒くなった。

ラブテープを体験して、セックスだけでなく恋の感覚も売り物になることがわかったのです。

But he was probably the only spurned lover in history who knew,beyond a doubt, that she actually had loved him.

だが、おそらく彼は歴史はじまって以来のユニークな失恋男だともいえた。女から真実愛されていたことを、疑問の余地なく知ってるのだから。 

これはクーパーが何年もメガンの気持ちを考え続けた結果なのです。she actually had loved himは先ほどのhe actually transed the tapeと対応しているのです。この文もいろいろ解釈できるのです。

she actually (had loved) him

actuallyは「真実に」「現実的に」「act-ually演技的に」、lovedは「愛した」「セックスした」という意味があるのです。

she actually had (loved him)

とも解釈できるのです。また、who knew beyond  a doubtは「疑いの余地なく」以外に「疑っているが、それをこえて」とも解釈できるのです。どれが正しいかは好きなように考えるがいいのです。またこの文は冒頭の

Galloway was the only one who was uniquely herself.

と対応しているのです。クーパーは「史上はじめて自分をフった女の気持ちを真剣に考えた男」なのです。

Surely that counted for something.

それがいくらかの慰めになるのは、たしかだった。

その史上はじめての男であることは、それだけでいくらか(=すごく)値打ちがあるのです。なにかの慰めではないのです。冷笑家はお呼びではないのです。

○ビ訳なのです。日本語が変なのは○ビの科学力に加え原文のことば遊びをなるべく維持したためなのです。

彼女が去りぎわに残していったテープは彼の心を縛り続けた。それをずっと持っていて、耐えられそうなときにだけそれを見た。何度も何度も、ギーギーガーガーいうサイドキックに抱かれたその少女は部屋を横切って歩き、顔には決意があらわれた。彼は「勝っている」という感覚、歩きだそうとしている彼女のさまをを覚えた。なお、ギリギリさせるものではあったが。
だんだん、テープの最後、その数メートルに集中するようになった。カメラがメガンから離れ、ナースのひとりを映した。そこには奇妙な表情があった。モナリザのような、名状しがたい薄ら笑みだった。これこそがメガンが見せたかったもの、わかってくれという最後の表明、これで終わりの訴えだとわかった。ナースのトランストラックを自らが補い出そうと、彼女の目で見、肌で感じようと決めた。その少女が長く辛い努力の末に手に入れたもの、メガンの意気揚々とした歩みから、どんなニュアンスも見て逃せなかった。そしてついに、その女が感じていたものが、たんなる同情と比べるものではないひどくおぞましいものだと確信した。それが、メガン・ギャロウェイを見ている世界、メガンが彼を残していくために選んだ映像だった。それは、どんなに高くついても、そんなものでは彼女は決して戻らないと誓ったところのイメージだった。
一年ほどたって、'ラブテープ'の映像部分だけを見ることを自分に許せる気になった。代わりは男優がつとめ、<バブル>と'外輪式蒸気船'のベッドの場面を再現した。彼女は本当にウソをつかなかったと受け入れざるをえなかった。その男はクーパーをまねようともしなかった。だれも彼の性技など研究したくなかった。
さらにたって、今度は本当にテープにトランスした。気が静まり、落ち着きを取り戻していた。この新しい必需品が売ることができるものを考えて、ぞっとした。アンナ=ルイーゼがそうしたように。しかし、彼女は本当に彼をものにしたことを知り信じた。疑いの余地など越えたところにあった。それは失恋男では史上はじめてだっただろう。
それにはきっといくらか値打ちはあったのだ。

最後の段落

His hate died quickly. His hurt lasted much longer, but a day came when he could forgive her.,
Much later, he knew she had done nothing that needed his forgiveness.

浅倉訳

彼の憎しみは急速に消えていった。心の傷が癒えるにはもっと長くかかったが、とうとうある日、彼女を許せる気持ちになった。
ずっとあとになって、彼はさとった。もともと、彼女のしたことは、おれが許すも許さないもなかったのだ、と。

最後の文は前の段落の

who knew, beyond a doubt, that she actually had loved him

を受けており、メガンがクーパーを愛したことは

nothing that needed his forgiveness

なのです。クーパーを愛したことを理解し、メガンの判断を受け入れたのです。この段落は前段のつづきではなく、平行しているのです。 前の段落で裁判になぞらえたのがここで効いてくるのです。

 ♡

○ビ訳なのです。

憎しみはすぐに消え失せた。傷はもっと長くあったが、そのうち赦せるようになった。
もっとたち、彼女は赦しがいるようなことはしなかったと知った。

美少女♡のありがたい解説と巻末のゴミ解説

 

30過ぎのAV女優は稼げないのです。30過ぎてもかわいいAV女優は日本にしかいないのです。そこで一発当てて引退しようと思い、クーパーを相手にしたのですが、二人は本当に恋したのです。その過程をテープにするのだから承知の上なのです。しかし彼がラブテープを売るのに反対したので、メガンが出て行ったのです。

ラブテープは大当たりして、メガンは引退しても義肢を使えるだけのお金を得たのです。かわりにクーパーが大いに傷ついたが、それはメガンの罪なのか?というのがこの話で、結論は否なのです。

この小説はクーパー視点でメガンが一見イヤな女に描かれているけど、彼女は悪人ではないからクーパーよりもっと傷ついているのです。やむなく男より金を取ったという、普通の恋の話なのです。

Megan's triumphant walk, the thing the girl had worked so long and hard to achive

メガンのthingと

And at last he was sure that what the woman was feeling was an uglier thing than mere pity.

ナースのthingが対比されているのです。メガンのボディーガイドが故障した場面

She was still frozen like a frame from a violent film. Her legs worked and so did her right arm, but from her hips all the way up her back and down her left arm the sidekick had shorted out. It looked awfully uncomfortable. He asked if there was anything he could do.

はこうなっているのです。メガンの敵はviolenceなのです。それに打ち勝とうとしたが、義肢は高いのです。かといってクーパーにできることはなにもないのです。

お金のためにやりたくもないAV女優をやって(現実の世界には自己実現やファンを喜ばすためにやっている人もいるしょうが、メガンは違うのです)、お金のために彼氏と別れる、ただそれだけの話なのです。恋の感覚を体験できるという新型ラブテープも、それで大金が稼げるという以外はストーリーになんの関係もないのです。SFでなくてもよくある話なのです。AV女優や身障者へのまなざしもおなじなのです。

「ブルー・シャンペン」は読者だまし、トリック小説なのです。承知の上でも読むのは大変なのです。トリック小説の存在を知らなければ論外なので、浅倉氏以外のだれがやっても似たようなことになるのです。この小説を「普通」に読んでしまうと、冷笑的、あるいは「聖なる傷を負ったフリーク」のような差別的な理解になるのです。ヴァーリイの意図がそのあぶり出しにあるのは間違いないのです。

He could let no nuance escape him as he watched Megan’s triumphant walk, the thing the girl had worked so long and hard to achieve.

 メガンの歩行を見ているのはクーパーなのです。彼はそのニュアンスを逃すまいとしているのです。そしておぞましい感情を抱いたのはクーパー自身なのです、ここは本質的なのです。

That was the image Megan had chosen to leave him with: the world looking at Megan Galloway. It was an image to which she would never return, no matter what the price.

メガンにとってthe worldはno matterなのです。原文通りならクーパーもthe worldに含まれるからno matterなのです。Megan Gallowayはthe priceなのです。メガンはthe price=自分自身を払ってでもthe worldには戻らないのです。ところで、メガンがあきらめたものはクーパーへの恋しかないのです。Megan Gallowayの全部が自分に差別的だったクーパーへの恋でできているのです。手と手でキュンなのです。クーパーが差別的だったから愛想を尽かしたのではないのです。

浅倉訳では

メガンの誇らしげな歩行、あれほど長く苦しい努力のすえに少女がやっとかちとったもの--それをながめている看護婦の表情から、どんなわずかなニュアンスも見逃すまいとした。

 看護婦がメガンの歩行をながめているのです。おぞましい感情を抱いたのは看護婦だけで、クーパーはそれを外から発見しただけなのです。そうするとクーパーは世界の外の人になり、メガンの恋心はわからなくなるのです。ちなみに後者の浅倉訳は二文が対応していることもわからないのです。

 それなのだ、メガンが彼に残していくことにしたイメージは--世界がメガン・ギャロウェイを見る目。それは彼女がどんな犠牲をはらっても、二度とそこへ帰りたくないイメージなのだ。

〇ビはちゃんと意識して訳したのです。苦労したのです。

それが、メガン・ギャロウェイ見ている世界、メガンが彼を残していくために選んだ映像だった。それは、どんなに高くついてもそんなものでは彼女は決して戻らないと誓ったところのイメージだった。 

ちゃんと対応が取れているのです。パーペキ!

メガンはクーパーを全身全霊で愛していたのです。だからラブテープを売ることはクーパーよりもっとつらいことだったのです。ここは描写ではなくことば遊びですが、本物の文学とはそういうものなのです。

大野万紀氏の解説

ヴァーリイは、未来と人間に対する悲観と楽観を、障害のある者、差別される者、現実の社会にとけ込むことのできない者、いわば聖なる傷を負ったフリークたちを中心に描くことによって、ややグロテスクに表現している。

〈八世界〉よりも現在に近く設定されていることから、重要な要素である身体改変が、〈八世界〉でのようにあっけらかんとはしておらず、グロテスクなフリークとして(ただし、それがやがて世界を変えていく、いわば聖痕を帯びた者として)の意味あいを持たされている。そのため、読後感はずっしりと重い。

見たいことしか見ないなら小説なんて読まなくていいのです。「聖なる傷を負ったフリーク」?バカも休み休み言うのです。おっと、バカと言うのはこちらなのです。でも

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こんな感じの美少女♡の言うことだと思えば腹も立たないのです。