Nabokov's Recommendationsの翻訳なのです。ナボコフのインタビュー集『Strong Opinions』から集めたそうなのです。リンクは日英のウィキペディアに張ったのです。インタビューだが口調は犬っちのです。
ナボコフの言う「天才genius」「偉大great」はだまし、トリックのことなのです。だから独仏文ならせめて英訳で読むべきで、文法の激しく異なる日本語訳を読んでも無意味なのです。「才能talent」はそれ以外のよさなのです。
「とくに好き」はA particular favoriteですが、とくに意味があるのです。
詩はよく知らないが、翻訳にはひどい間違いがいくつもある。
偉大。
オノレ・ド・バルザック(Balzac, Honoré de)
ひどい。安易でつまらないインチキなリアリズム。※ロラン・バルトもボロクソに言ってます。
二流。中身スカスカの見かけ倒し。
- 『びっくりハウスの迷子』(Lost in the Funhouse) とくに好き。愛らしく敏速でたくさんの小さな斑点のついた比喩。
すばらしい小説と最低な戯曲の作者。
- 『モロイ』(Molloy) 好きなベケットの作品。
- 『マロウンは死ぬ』(Malone Dies) 好きなベケットの作品。
- 『名づけえぬもの』(The Unnamable) 好きなベケットの作品。
- 『ペテルブルグ』(Petersburg) 20世紀の散文の第三位の傑作。壮麗な幻想。
20歳から40歳のころのお気に入りで、いまも好き。
10歳から15歳のころのお気に入りで、いまも好き。叙情詩が大好きだが、長いやつはいまいち。
- 『十二』(The Twelve) 恐ろしい。端っこにイエス・キリストが接着されたピンク色のボール紙と一緒に、自覚的に贋の「原始的」なトーンで書かれている。
ホルヘ・ルイス・ボルヘス(Borges, Jorge Luis)
好き。彼の不思議な迷宮のすがすがしさといったら!思考の明晰さ、詩の純正さ。無限の才能の男。
取るに足らない、つまりわたしにはまったくの無価値。
20歳から40歳のころまでは好きだったが、もう好きじゃない。
10歳から15歳のころのお気に入りで、いまも好き。
どうでもいい。
嫌い。二流。短命。傲慢。取るに足らない、つまりまったくの無価値。ゴミ。
ずっと好き。彼のピクニックを映画にしたかったと思うよね。子供向けストーリーでは史上最高の作家だ。
ルイ=フェルディナン・セリーヌ(Céline, Louis-Ferdinand)
二流。中身スカスカの見かけ倒し。
ミゲル・デ・セルバンテス(Cervantes, Miguel de)
- 『ドン・キホーテ』(Don Quixote) 残酷で粗野な古臭い本。
- 『The Country Husband』 とくに好き。実に首尾一貫している。
10歳から15歳のころのお気に入りで、いまも好き。才能はあるが天才ではない。非常に好きだが、説明できない。
ニコライ・チェルヌイシェフスキー(Chernyshevsky, Nikolai)
彼の運命は感動的だが、作品はお笑い種だ。
8歳から14歳のころのお気に入りだった。本質的にお子様向け作家。いろんな意味でロマンチック。
アーサー・コナン・ドイル(Conan Doyle, Arthur)
8歳から14歳のころのお気に入りだったがいまは違う。本質的にお子様向け作家。いろんな意味でロマンチック。
8歳から14歳のころのお気に入りだった。本質的にお子様向け作家。間違いなくヘミングウェイやウェルズに劣る。耐えがたい土産物屋スタイルとロマンティストの紋切り型。自分も書きたいと思うものはなにもない。知性も感情もどうしようもなくガキンチョ。いろんな意味でロマンチック。すこしインチキくさい。
フョードル・ドストエフスキー(Dostoevsky, Fyodor)
嫌い。安っぽい扇情家、下手くそで俗悪。予言者気取り、人気取りのジャーナリストでぞんざいなコメディアン。彼の場面のいくつかはものすごく楽しめる。彼の復古的なジャーナリズムを真に受ける人はいない。
- 『分身』(The Double) 彼の最高作。ゴーゴリ『鼻』のあきらかなパクリだが。※オリジナルはみんなパクリに劣るということ
- 『カラマーゾフの兄弟』(The Brothers Karamazov) 超嫌い。
- 『罪と罰』(Crime and Punishment) 超嫌い。だらだら長いし吐きそう。
20歳から40歳のころのお気に入りで、いまも好き。
嫌い。恐るべき月並みさ。
まったく一流じゃない。
ラルフ・ワルド・エマーソン(Emerson, Ralph Waldo)
彼の詩は楽しい。
ウィリアム・フォークナー(Faulkner, William)
嫌い。トウモロコシの穂年代記(corncobby chronicles)の著者。これらを傑作だというのはバカげた妄想だ。取るに足らない、つまりまったくの無価値。
ギュスターヴ・フローベール(Flaubert, Gustave)
10歳から15歳のころのお気に入りで、いまも好き。14歳から15歳にかけて作品をすべて読んだ。
一冊、たぶん『インドへの道』(A Passage to India)しか読んでいないが、気に食わなかった。
おかしな比喩。ムカつく。下劣なペテン。フロイトの夢の解釈はインチキで邪悪。無価値。
ジョン・ゴールズワージー(Galsworthy, John)
恐るべき月並みさ。
フェデリコ・ガルシーア・ロルカ(García Lorca, Federico)
二流、短命、傲慢。
彼の神秘主義的な教訓主義を真に受ける人はいない。いちばん悪いところ、つまりウクライナ的なものごとにおいては彼は無価値な作家だ。いちばんよいところは比類なく、だれも真似できない。彼の教訓的な偏りはムカつくし、若い女を描けないところはがっかりだし、彼の宗教への強迫は残念に思う。
- 『Death in Miami Beach』 とくに好き。
恐るべき月並みさ。
ナサニエル・ホーソーン(Hawthorne, Nathaniel)
華麗な作家。
非常に重要。
- 『La femme partagée』 とくに好き。
アーネスト・ヘミングウェイ(Hemingway, Ernest)
男の子向けの本の作者。コンラッドよりは間違いなくいい。すくなくとも独自の文体を持っている。自分で書いておけばと思うものはなにもない。知性も感情もどうしようもなくガキンチョ。bells, balls, bullsについての作品にはムカつく。
- 『殺し屋』(The Killers) 楽しく、非常に芸術的。偉い。
- 『老人と海』(The Old Man and the Sea) すばらしい。虹色に光る魚やリズミカルなおしっこの描写は最高。
※『Cat in the Rain』は結構な「だまし」
アルフレッド・エドワード・ハウスマン(Housman, A. E. )
20歳から40歳のころのお気に入り。いまも好き。
二人の素晴らしい天才作家。間違いなく一流の小説。
よい詩人だが口汚い批評家。
大嫌いというより彼のことば遣いに寒気を覚える。天才でないのは間違いない。
偉大。20歳から40歳のころのお気に入りで、いまも好き。人はわたしとジョイスをいろいろ比べるが、わたしの英語は子供同然だ。天才。
- 『ユリシーズ』(Ulysses) 神の芸術作品。20世紀の散文最大の傑作。他のジョイスの作品を引き離す。見事な独自性、独特で明晰な思考と文体。モリーの独白はこの本の最大の弱点。明晰さと正確さが大いに気に入っている。
- 『芸術家の肖像』(A Portrait of the Artist as a Young Man) 好きになったことはない。くだらないことをぺちゃくちゃ言う本だ。
- 『フィネガンズ・ウェイク』(Finnegans Wake) 雑然としてさえない偽物の言い伝え、本の形をした冷たいプリン。伝統的でくすみ、たまに天の抑揚はあるが、無味乾燥な発言の埋め合わせ。大嫌い。ガンの増殖of fancy word-tissue hardly redeems that dreadful joviality of the folklore and the easy, too easy allegory. 方言で書かれた地方文学でしかなく、どうでもいい。痛ましい失敗ですごくウンザリ。
- 『変身』(The Metamorphosis) 20世紀の散文で二番目の傑作。
ニコス・カザンザキス(Kazantzakis, Nikos)
二流、短命、傲慢。
10歳から15歳のころのお気に入り。いまも好き。
当時のロシアの最高の詩人。
ラドヤード・キップリング(Kipling, Rudyard)
8歳から14歳のころのお気に入りだった。本質的にお子様向け作家。いろんな意味でロマンチック。
デーヴィッド・ハーバート・ローレンス(Lawrence, D. H.)
二流、短命、傲慢。ひどい。安易でつまらないインチキなリアリズム。いまいましい。
よい翻訳家ではない。オーデンよりムカつく。
オシップ・マンデリシュターム(Mandelshtam, Osip)
素晴らしい詩人で、ソビエトロシア時代の最大の作家。彼の詩は人間の知性のもっとも深く高い地点の見事な見本だ。ブロークほどではない。彼の悲劇的な運命のため実際よりよく見えている。
嫌い。二流、短命、傲慢。
- 『ヴェニスに死す』(Death in Venice) 愚か。これを傑作だというのはバカげた妄想だ。俗物(Poshlost)。ひどいが、どこかもっともらしい。
ギ・ド・モーパッサン(Maupassant, Guy de)
間違いなく天才ではない。
サマセット・モーム(Maugham, W. Somerset)
ひどい。安易でつまらないインチキなリアリズム。間違いなく天才ではない。※犬っちが『赤毛Red』の冒頭を読んだところ、間違いなく天才でした。ナボコフに勝つる!
大好き。みんな彼が朝食時にネコにイワシをやっているところを映画にしたいと思うよね。
ムカつく。
天才。
どうでもいい。
間違いなくかなりの一流小説。
- 『The Scarlet Pimpernel 』 10歳から15歳のころのお気に入りだが、いまは違う。
優れた詩人だが残念な小説家。
- 『ドクトル・ジバゴ』(Doctor Zhivago) 大嫌い。メロドラマで下品だ。これを傑作だというのはバカげた妄想だ。歴史的錯誤のボリシェヴィキのシンパ。哀れなモノ、不器用、あたりまえ、出来合いのシチュエーションとありふれた偶然のメロドラマ。
超どうでもいい。
べつに好きじゃない。
10歳から15歳のころのお気に入りだが、いまは違う。みんな彼の結婚式を映画にしたかったと思うよね。
完全に二流。まったくのデタラメ。神々しいインチキ。
20歳から40歳ごろのお気に入りで、いまも好き。
- 『失われた時を求めて』(In Search of Lost Time) 前半は20世紀の散文の四番目の傑作。
アレクサンドル・プーシキン(Pushkin, Alexander)
20歳から40歳ごろのお気に入りで、いまも好き。天才。
- 『エヴゲーニイ・オネーギン』(Eugene Onegin) 偉大な詩。Walter W. Arndtの翻訳はゴミクズ。
- 『文体練習』(Exercises in Style) スリリングな傑作で、フランス文学最高の物語の一つ。
- 『地下鉄のザジ』(Zazie in the Metro) すごく好き。
ジョン・クロウ・ランサム(Ransom, John Crowe)
- 『Captain Carpenter』 この詩はすごい。
10歳から15歳ころのお気に入りで、いまも好き。
アラン・ロブ=グリエ(Robbe-Grillet, Alain)
偉大。好き。彼の不思議な迷宮のすがすがしさといったら!思考の明晰さ、詩の純正さ。素晴らしく詩的で独創的。
恐るべき月並みさ。
近年では飛び抜けてすぐれた芸術家。
- 『A Perfect Day for Bananafish』偉大な物語。とくに好き。
原文は
"A Perfect Day for Bananafish." A great story. A particular favorite.
ですが
She read an article in a women's pocket-size magazine, called "Sex Is Fun-or Hell."
小説とかけているのです。「バナナフィッシュにうってつけの日」は誰も死んでいない (amazon.co.jp)
ジャン=ポール・サルトル(Sartre, Jean-Paul)
カミュよりさらにゴミ。
- 『In Dreams Begin Responsibilities』とくに好き。
アルベルト・シュヴァイツァー(Schweitzer, Albert)
大嫌い。
ウィリアム・シェイクスピア(Shakespeare, William)
14歳から15歳ごろに全作品を読んだ。みんな彼に映画で王の幽霊役をやらせたかったよね。彼の、ことばどおりの、詩的な肌理はいまでも世界一で、彼の戯曲の戯曲としての構造よりずっとすぐれている。「これ✨」はことの隠喩であり、プレイの隠喩ではない。天才。
最後の原文は
It is the metaphor that is the thing, not the play.
です。
大好き。
メロドラマ。二流。
ラビンドラナート・タゴール(Tagore, Rabindranath)
恐るべき月並みさ。
アレクセイ・ニコラエヴィッチ・トルストイ(Tolstoy, Aleksey)
才能ある作家で、記憶に残る二三のSFを書いた。
10歳から15歳のころのお気に入りで、いまも好き。14歳から15歳ごろに全作品を読んだ。彼の功利主義的な説教を真に受ける人はいない。天才。
- 『アンナ・カレーニナ』(Anna Karenina) 比類なき散文の芸術性。19世紀の文学の至高の傑作。
- 『イワン・イリイチの死』(The Death of Ivan Ilyich) 『アンナ・カレーニナ』に近い二位。
- 『復活』(Resurrection) 大嫌い。
- 『クロイツェル・ソナタ』(The Kreutzer Sonata)大嫌い。
- 『戦争と平和』(War and Peace) ちょっと長すぎ。万人向けの陽気な歴史小説で、とくに若い人にいい。芸術的には満足できない。扱いづらい主旨、説教臭い幕間、わざとらしい偶発、歴史的な情報源に対する無批判。
才能はあるが天才ではない。
フョードル・チュッチェフ(Tyutchev, Fyodior)
偉大な叙情詩人。
近年では飛び抜けてすぐれた芸術家。好きな物語が多すぎて選べない。
- 『The Happiest I've Been』 とくに好き。
10歳から15歳ころのお気に入りで、いまも好き。
- 『八十日間世界一周』(Around the World in Eighty Days) 10歳から15歳ころのお気に入りだが、いまは違う。
H・G・ウエルズ(Wells, H. G.)
10歳から15歳ごろのお気に入りで、いまも好き。偉大な芸術家で、わたしの子供のころのお気に入り。彼の社会学的な思考はシカトしてもなんの問題もなく、ロマンスとファンタジーは素晴らしい。コンラッドよりはるかに偉大な芸術家。わたしがもっとも深い敬意を抱いている作家。
『情熱的な友人たち』(The Passionate Friends) ウエルズの同時代人がなしえたどんなものよりよい。
- 『アン・ヴェロニカの冒険』(Ann Veronica) ウエルズの同時代人がなしえたどんなものよりよい。
- 『タイム・マシン』(The Time Machine) ウエルズの同時代人がなしえたどんなものよりよい。とくにいい。
- 『盲人の国』(The Country of the Blind) ウエルズの同時代人がなしえたどんなものよりよい。とくにいい。
- 『透明人間』(The Invisible Man) とくにいい。
- 『宇宙戦争』(The War of the Worlds) とくにいい。
- 『月世界最初の人間』(The First Men In the Moon) とくにいい。
- 『Complaint』 偉大な詩の一片。
教条主義的で説教臭いというしかない。8歳から14歳のころのお気に入りだった。本質的にお子様向け作家。いろんな意味でロマンチック。
二流、短命、傲慢。
ニコライ・ザボロツキー(Zabolotsky, Nikola)
莫大な才能の持ち主。
エヴゲーニイ・ザミャーチン(Zamyatin, Yevgeny)
どうでもいい。
ミハイル・ゾーシチェンコ(Zoshchenko, Mikhai)
間違いなくかなりの一流小説。