スタプリ全体でもっとも大事なことは、ララちゃんが男の子であり、ひかるに恋しているということであります。映画では、ユーマが無生物であり、そばにいる人の記憶や感情を記録するレコーダーのようなもので、劇中ではララの記憶と感情を記録し、またそれらを反映した行動をするであります。つまり、ララが怒っているときはユーマも怒っているように見え、ララがよろこんでいるときはユーマもよろこんでいるように見えるであります。これらを理解しないと映画の固有の価値がほとんどなくなり、ありふれた感動作になってしまうであります。
もうひとつ重要なことがあり、それは放送分のスタプリの最終二話は作り直しだということであります。放送分は無視して「本来の最終回」を考えなければ理解できない演出がスタプリには数多くあるであります。本来の最終回を復元したであります。
フローは無視して重要なところから順に書くであります。
テーマ解説
ユーマはララの記憶と感情を記憶したであります。ララとユーマがいっしょにすごしたのは三日間であります。初日は沖縄に行き、二日目は不思議スポットめぐりをし、三日目はハンターに襲われたであります。ララはひかると楽しくデートして、その記憶と感情をユーマが記録したであります。ユーマはひかるのララへの思いやりも記録したであります。つまり、ユーマの星は地球の記憶とプリキュアの歌と想い合うふたりの気持ちだけからなる美しい星であります。お歌の解説に書いた『What a Wonderful World』の
Yes, I think to myself, what a wonderful world
の意味であります。同格のコンマでつながっており、myselfつまりひかララユーマとwhat a wonderful worldは等しいであります。
スター:まずは
信頼や友情などとはことなり、恋は無条件で絶対的なものではなく、破綻の可能性がつねにあるであります。しかしユーマの星はひかるとララしかいない閉じた世界であります。愛はあるけど、未来がないから勇気も希望もあってもばらばらであります。スタプリでは愛+勇気+希望=しあわせ(お歌の解説の『オズの魔法使い』に書いたであります)だから、ユーマの星にはしあわせの白はちょっとであります。男女の恋は破綻の可能性があるからこそしあわせであります。
ユーマは赤ん坊のように見えるであります。
『2001年宇宙の旅』のスターチャイルドはもろ人間の赤ん坊なので見た目はかなり違うであります。
どんな願いもまっすぐ "本当"を聞かせてよ
だってきみの夢は わたしたちの夢
とにもかくにもララはひかると子供を作り、夢をかなえたが、ララはそのことに気づいてはいないであります。
この「夢」はララの恋、友だちに会いたいという気持ち、ユーマの夢(平和)と、ふたり、仲間、他人と三つのスコープのすべてがあてはまるであります。それをかなえるのがどれも愛であります。
ララの気持ち
バーン:まだ動けるのか?
バーン:お前ら、ただの人間じゃねえな。
ひかる:だれ?
フワ:なんでこんなことするフワ!
バーン:さわぐな!
バーン:探し物に来ただけだ
バーン:ん?
バーン:はぁ、見つけたぞ
バーン:ちょっと育っちまってるが、まあいい
バーン:そいつをもらうぜ!
ララ:だめえ!!
ひかる:ララ!
フワ:ユーマ!バーン:ん?なるほど
バーン:お前らもそいつ狙いか
ララ:なに言ってるルン!?
バーンの言い分は
バーン:お前ら、ただの人間じゃねえな。
バーン:ん?なるほど
バーン:お前らもそいつ狙いか
であります。バーンはプリキュアのことを自分たちの同類のハンターだと思っているであります。
ハンター5:横取りする気か
ハンター6:邪魔はさせねえ!
バーン以外のハンターの認識もおなじであります。
アン:スタードロップは、出会った相手から強い影響を受けてしまうのです
アン:似た性質を持つミラクルライトでその子を探し、保護するのが
アン:本官の本来の任務だったであります
ララ:守るなら…
アン:えっ?
ララ:わたしたちでもやれるルン
ララの「守るなら…」は、ユーマを悪い影響から保護するという意味であります。
バーン:守ろうが、奪おうが
バーン:そいつにとっちゃ大して変わらねえ
バーン:全部俺たち、人のやることだ
バーン:そうだろう?
バーンはプリキュアをハンターだと思っているから、言い分は
先に手に入れたものを守ろうが、あとから来てそれを奪おうが、そいつにとっちゃ大して変わらねえ
であります。これは乱暴だけど間違ったことではないであります。しかしララは
ユーマを悪い影響から守ろうが、ハンターがユーマを奪おうが、そいつにとっちゃ大して変わらねえ
と解釈してしまったであります。つまり自分の大義名分をなくしたであります。ララはアンにも
アン:その子だって、きっと…
ララ:いやルン!!
ハンターにも
ララ:いやルン…
ララ:ユーマを連れてかないで
「いやルン」とおなじことばを向けているから、自分の気持ちが利己的だと自覚しているであります。そのため
ミルキー:わたしのせいルン…
スター:えっ
ミルキー:わたしがユーマと
ミルキー:離れるのはイヤだって
ミルキー:もっといっしょにいたいって
ミルキー:そのわがままがユーマを…
スター:違うよ!
スター:あのハンターは、ユーマを怖がらせたから
ミルキー:でも
自分を責めたであります。
ユーマ:☆△
ミルキー:ユーマ
ミルキー:ごめんルン
ミルキー:あたしのせいで、なんか大変なことに
最後までその認識であります。
ミルキー:ユーマはきっと、宇宙へ帰りたかったんだろう
ミルキー:それをわたしは…
ララはユーマが宇宙に帰りたがっていると思っているため、本当にユーマが帰るであります。
ララ:そうなったら、わたしもユーマの星に暮らせばいいルンプルンス:現実的じゃないでプルンス
ララの気持ちは仲良くなったネコを親に捨てられそうになった小学生のようなもので、現実的でないことを言うのはなにもおかしくないであります。えれまどとユニはほとんどノータッチだし、ひかるはララのような仲直りの経験もないから、これはララだけの気持ちであります。
スター:ララは、ユーマが好き
ミルキー:ルン?
スター:もちろんわたしも、ユーマが好きだよ
プリキュアは変身中はプリキュア名で呼び合うのが基本ですが、たまに本名で呼ぶことがあるであります。ここでは変身前のララの気持ちを指しているであります。前述のように「ララは、ユーマが好き」と「もちろんわたしも、ユーマが好きだよ」は全然違う「好き」であります。でもひかるもみんなもララとユーマの仲直りのことを知らないから、自分とおなじように考えたであります。
スター:わたしだって、ユーマと別れるのはいやだよ
スター:でも、さっき、すぐそうこたえられなかったのは
ミルキー:いちばん大切なのはミルキー:ユーマの、気持ちだから
ここは「いちばん大切なのは ユーマの、気持ちだから」とララに言わせつつ、ララの気持ちをだれも考えなかったという残酷な場面であります。
さて、ユーマをひかるに置き換えて
ミルキー:いちばん大切なのは
ミルキー:ひかるの、気持ちだから
ララがひかるに恋していることを思い出せば
スター:まずは
アニメでは握手は絶対的な信頼や友情をあらわすでありますが、女子が握手をもとめるときには男子には恋していないのであります。つまりララはここで失恋したであります。恋と信頼が両立しないのは、恋が本質的に破綻の可能性を持っているからであります。 ちなみに、男子が握手を求めるのは女子への恋をあきらめたときであります。これがヒープリ映画で描かれるのは間違いのないところであります。魔法少女まどか☆マギカの杏子とほむらのような、女の子どうしの恋はどうやら男女の恋とはまったく別物であります。
ひかるの気持ち
ユーマを奪われたララがおびえているだけであります。
ララ:ユーマァァァーーー!!!
アニメでは号泣には大した意味はないであります。
ユーマを暗黒惑星化させたのはララではないであります。悪意などどこにもないであります。ハンターでもないであります。他のハンターからぶんどっただけの悪意だし、いちいち暗黒惑星化させていては商売あがったりであります。ひかるのハンターへの憎しみが暗黒惑星化させたであります。それが証拠にユーマの顔が劇中でここだけ赤くなったであります。ひかるの憎しみと同時に、ララを思いやる心もユーマが記録したであります。
暗黒惑星がハンターを攻撃するのは、ひかるのハンターへの憎しみのためであります。
ユーマはプリキュアも攻撃しますが、バーンが余計なことを言ったためであります。
バーン:守ろうが、奪おうが
バーン:そいつにとっちゃ大して変わらねえ
バーン:全部俺たち、人のやることだ
このためユーマは見境なく攻撃するであります。
エンディングとエピローグ
なにを思ったのか東映の広報がワスレグサ(クヮンソウ)と書いてしまいましたが
和歌では、夏の季語、および悲しいこと(忘れたいこと)があった心境を表す言葉として詠まれる。
忘れ草 垣も繁みに植えたれど 醜(しこ)の醜草(しこくさ) なお恋にけり— 『万葉集』巻十二3062わが屋戸の軒のしだ草生ひたれど恋忘草見れどいまだ生ひなく— 『万葉集』巻十一2475
断じてありえないであります。これはヒメユリであり
夏の野の繁みに咲ける姫百合の知らえぬ恋は苦しきものぞ 大伴坂上郎女 巻八1500
恋のうたであります。ララの恋を象徴的に描いているであります。映画のタイトルが『星のうたに想いをこめて』と「うた」がひらがななのだから、『Twinkle Stars』以外にもなにかがあり、すなわちこの万葉集のうたであります。しかしユリだから女の子どうしだと短絡するとプリキュアチームの思うつぼであります。
スター:キラやば…
ひかるは涙をこぼしていないので、大した意味はないであります。
ミルキー:またルン
ララは 宇宙に帰って行くユーマの星を見て涙をこぼしたであります。アニメでは涙をこぼすのは信念を抱いたときであります。ララはもうユーマとは会えないことはわかっていたが、「またルン」とウソをつき、それを信じたであります。もしユーマとまた会えたなら、自分の恋もかなうと信じたであります。つまり愛の星に願いをかけたであります。
この場面の元ネタは千昌夫『星影のワルツ』であり、「星のうたに想いをこめて」の「うた」の一つであります。残りは『Twinkle Stars』と万葉集であります。まだあるかもであります。
ララ:これはきっと、道しるべルン
このペンは本来の最終回で使うはずだったであります。しあわせの白の羽をあしらっているであります。
みんな友だち
ララ:だいじょうぶ、みんな友だちルン
「みんな友だち」はスタプリ全体ひいてはプリキュア全体のテーマであり、本作でも重要な位置を占めるであります。
ソレイユ:仲がいいんだか、悪いんだか…
ユニはアンが帰るのを
こっそりのぞいているであります。
ミルキー:あたし、わかったルン
ミルキー:この星は
ミルキー:ユーマがいつかなりたい星の
ミルキー:未来のイメージ
ミルキー:ユーマの
ミルキー:夢ルン
「あたし、わかったルン」という言い回しは、観客もララになったつもりで考えなさいという意味であります。
ミルキー:これは…きっと…ミルキー:夢ルン
ララがこの花を知っているのは、ユーマと仲直りしたところにたくさん咲いていたことだけであります。だからユーマの星にこの花が一面に咲いているということは、ユーマはみんなと仲良くしたいのだろうとララは考えたであります。それは愛の星であるユーマの夢にふさわしいであります。ユーマは無生物なので、これはあくまでララの考えであります。ララちゃんはとてもやさしい子であります。
男 強さ やさしさ
力 勇気 かがやき
星空刑事はアン、でありまーす!
「みんな仲良くする」がスタプリのテーマだと知っていれば、三波春夫他『世界の国からこんにちは』を第一話に見つけることができるであります。
ありふれた丘なので知らなければまず不可能でありますが、文学にはこういう偶然の一致は絶対ないのであります。
こんにちは こんにちは
月へ宇宙へ
こんにちは こんにちは
地球をとび出す
こんにちは こんにちは
世界の夢が
こんにちは こんにちは
みどりの丘で
1970年の こんにちは
こんにちは こんにちは
握手をしよう
ララは男の子だからかわいい女の子に手を握られて、ことばも通じたので恋したのであります。手と手でキュン!であります。
戦争について
この映画は沖縄が舞台になっているでありますが、その必然性はまったくないであります。しかし
と、戦争を強く連想させるものがあるであります。なぜなら本来なら最終回はヘビ女から地球を守る戦争だったからであります。オープニングでプリキュアがひらひらと飛ぶのはパクリ元のバルキリーのイメージであります。
しかしこの作品は戦争期のできごとや作品でも
- 1939年 『オズの魔法使い』
- 1940年 『星に願いを』
- 1967年 『What a Wonderful World』
- 1969年 (テレビシリーズまどかのエピソード)アポロ11号の月着陸
- 1970年 (テレビシリーズ第一話)『世界の国からこんにちは』
平和と未来を感じさせるものを多く元ネタとしているであります。沖縄出身の知念里奈さんは平和な沖縄と愛の象徴であります。メリー・アンがやたらかわいくしかも好待遇なのもそのためであります。
ユーマの星
ユーマの星は、ララの楽しかった沖縄と不思議スポットめぐりの記憶と感情と恋心と、ひかるのララへの思いやりだけできている美しい星であります。ララは知らないが、彼の願いがかなった星であります。普通の映画ならメインディッシュであります。
ララ:聞かせて
ララ:ユーマの想い!
聞かせてといったのだから
コスモ:星が、生まれ変わる!
ひかるの憎しみのかわりに、ひかるとララの想いと記憶を見せたであります。憎しみは想いではないであります。
ミラクルライトとユーマの星
プルンス:さて、このミラクルライトには
プルンス:不思議な力があるでプルンス
会社ロゴ前の、ミラクルライトの注意事項の説明でありますが、これも映画の大事な一部であります。『星に願いを』の
きらきら星は不思議な力
から、ミラクルライトときらきら星がおなじ「不思議な力」を持っていることがわかるであります。
星に祈れば淋しい日々を
光り照らしてくれるでしょう
と、主題歌『Twinkle Stars』の
どんな夜にも灯る 熱い願い 煌めくよ
それは愛の光 彼方まで照らす
から、「不思議な力」は愛の力だということがわかるであります。
アン:似た性質を持つミラクルライトでその子を探し、保護するのが
アン:本官の本来の任務だったであります
ユーマと似た性質を持つミラクルライトだから、ユーマの星もまた愛の星であることがわかるであります。 したがって「彼方まで照らす」のは、ひかるとララの愛だけでなく、ユーマの星もまたそうだということがわかるであります。実際、ユーマの星はひかるとララの感情と記憶からなる星であります。
フワ:がんばれプリキュア~!
フワ:がんばれフワ~!
愛の光は紫色であります。
ひかララが上空に撃っているビームもおなじ色であります。
ユーマとミラクルライトは似た性質というよりおなじものであります。
さて、テレビシリーズ主題歌『キラリ☆彡スター☆トゥインクルプリキュア』の出だしは
ドッキドキ ドリームが煌めく
であります。愛が視聴者のドッキドキなドリームを満たすであります。
ユーマとララの仲直り
ユーマの行動はすべてララの感情の反映であります。
ララ:オヨッ
ララ:オヨオヨオヨッ
ララ:あっ、こらっ!
ララ:だめだって言ってるルン!
ララ:痛った!
ララ:くっ…
ララ:もう
ララ:いいかげんにするルン!
ユーマが逃げたがって反抗的に見えるのは、ララが無理矢理連れて帰ろうとする強引さの反映であります。
ララ:異星人は、地球人に正体がバレちゃいけないルン
ララ:バレたら、大変なことになるルン
ララ:それに
ララ:知らない人に連れて行かれたらどうするルン!
ララ:怖い目にあったら、どうするルン!
ララはユーマが逃げたがっていると誤解しているであります。ララが自分にはなついていないと思っているからユーマが逃げたがるであります。ララはやさしいから宇宙生物のユーマの身を心配しているであります。
ララ:みんながひかるみたいな人ばかりじゃないルン
ララ:これがもし!もし!
ララ:あっ
アニメ一般で、こぼさない涙にはあまり意味はないであります。つまり、目のアップはひっかけであり、この場面から意味をくみ取りすぎてはいけないであります。
ララ:もう、知らないルン…
ララ:勝手にするルン
みんなはひかるのようなオカルトマニアではないが、みんないいやつで仲良くしてくれるから、ユーマもどこに行ってもきっとかわいがられるだろうと気づいたであります。バツが悪くなって「もう、知らないルン…」とごまかしたであります。
ララ:んっ
ララ:知らないって!
ララはユーマが逃げたがっているなら置いていこうとしたであります。ネコを捨ててくるカンジであります。本当は置いていきたくないからユーマもついてくるであります。
ユーマが泣いているように見えるのは、ララが心で泣いていることの反映であります。
ララ:オヨ!
ララ:な、泣いてるルン!?
ララ:??とか??ルン!?
ララはユーマが捨てられるのがいやで泣いていると勘違いしたであります。
ララ:ど、どうするルン!?
ララ:ど、どうすればいいルン!?
ララ:オヨ!?
ララ:えっと…たしかこんな感じ…
ララ:♪~
ララ:落ち着いたルン?
落ち着いたのはララのほうであります。歌うことで落ち着いたであります。
ララ:じゃあ
ララ:行くルン
ララ:なにしているルン?
ララ:みんなのところへ、帰るルン
ララはツンデレであります。
ユーマがついてくるのは、ユーマといっしょにいたいというララの気持ちが反映されたにすぎないであります。
ララ:んっ…
ララは握手のつもりで触手を出したが、ユーマがつかんだのはあくまで「握手をしたい」というララの気持ちの反映であります。