わたし達の中に 生命があふれてる

犬好きで重なる勇気は最強なんだから

テッド・チャン『息吹』もゾンビホラーなのです

f:id:ChaldeaGecko:20200327200412j:plain
テッド・チャン『息吹』もゾンビホラーなのです。ゾンビが大好きなのです。

Which is why I have written this account. You, I hope, are one of these explorers. You,  I hope, found these sheets of copper and deciphered the words engraved on their surfaces. And whether or not your brain is impelled by the air that once impelled mine, through the act of reading my words, the patterns that form your thoughts become an imitation of the patterns that once formed mine. And in that way I live again, through you.

だからわたしは、この説明を記している。願わくば、いまこれを読んでいるあなたが、そうした探検家のひとりであってほしい。この銅板を発見し、表面に刻まれた言葉を解読したのであってほしい。だとしたら、いまあなたの脳を動かしているのがかつてわたしの脳を動かしていた空気だろうとそうでなかろうと、あなたの思考をかたちづくるパターンは、わたしの言葉を読むという行為を通して、かつてわたしの思考をかたちづくっていたパターンを模倣することになる。そしてわたしは、そのようにして、あなたを通じて生き返ることになる。

 青字は〇ビが補ってわやりやすくしたのです。この銅板を読んだ人は語り手の思考に乗っ取られるのです。比喩ではなくズバリそうなのです。

Though I am long dead as you read this, explorer, I offer to you a valediction. Contemplate the marvel that is existence, and rejoice that you are able to do so. I feel I have the right to tell you this because, as I am inscribing these words, I am doing the same.

探検家よ、あなたがこれを読んでいるいま、わたしはとうの昔に死んでいるが、それでもわたしは、あなたに別れの言葉を贈ろう。存在するという奇跡についてじっくり考え、自分にそれができることを喜びたまえ。わたしにはそう伝える権利があると思う。なぜなら、いまこの言葉を刻みながら、わたし自身がおなじことをしているからだ。

「それができる」は「じっくり考え」ることではないのです。 語り手が

(語り手が)存在するという奇跡についてじっくり考え、自分(語り手)にそれ(存在すること)ができることを喜び

ながら銅板に刻んでいるので、それを読んだ探検家は思考を乗っ取られつつ

(語り手が)存在するという奇跡についてじっくり考え、自分(探検家)にそれ(語り手を存在させること)ができることを喜び

ながら消えていくのです。乗っ取る語り手が乗っ取られて消えてしまう探検家に向けたものなので「別れの言葉」なのです。語り手はディオみたいな悪党なのです。上にthis accountが出てくるから、the rightを権利ではなくthe 

true account
実話・実録とすれば

わたしはあなたにそう伝える実話をしたと思う。なぜなら、この言葉を刻むことで、わたし自身がおなじことをしているからだ。

ときれいにつながるのです。ひっかけを保って訳すと

わたしにはあなたにそう伝える正しさがあると思う。なぜなら、この言葉を刻みもって、わたしがおなじことをしているからだ。

 正しさが倫理的なのか方法的なのかなのです。パーペキなのです。もっとも

わたしにはそう伝える権利があると思う。

乗っ取るのが「権利」だというあつかましさはなくなってしまったのです。

 

Our universe might have slid into equilibrium emitting nothing more than a quiet hiss.

われわれの宇宙は、静かなしゅっという音だけを残して平衡状態に達したかもしれない。(大森)

われわれの宇宙は、さーという静かな音だけを吐き出す平衡状態に達したかもしれない。(〇ビ)

emitting以下はequilibriumにかかるのです。これはさーとつづく音が背景雑音になっているのです。 われわれの宇宙の背景雑音のイメージなのです。しゅっと音がしておしまいではないのです。

――『息吹』の最後の方で、「われわれの宇宙は、静かなしゅっという音だけを残して平衡状態に達したかもしれない(67P)」という一文がありますが、ミュージシャンとしてこれはどんな音だと想像しますか。

川辺:あの最後の一息みたいなやつですよね。その音は、蒸気機関車のエンジンのようなものが最後にストンと動かなくなる音というイメージでした。金属の筒の中を空気が通る音というか。その後の圧倒的な静けさを、「しゅっ」という音で鮮明に浮かび上がらせていて、すごく詩的ですよね。

かわいそうに間違えてイメージしたのです。